「はい。といっても、流石に一家に一台ってわけにはいかないので、乗り合いバスみたいな感じで、藤市と十燈荘の間を走らせてますね。もちろん、その時間以外でも、呼び出されれば行きますけどね。タクシーみたいに」
「『じゅっとう通信』は、十燈荘内からしかアクセスできないのでは?」
「ああ、そうなんですが、登録された電話番号から電話があれば受付してますよ。冬加ちゃんは、遅くまで塾の日もあるみたいで、夜中に迎えに行くこともありましたね。あの子が殺されてしまったなんて、可哀想なことです」
「ええ、本当に」
深瀬は頷き、さらに問いかけを続けた。
「この会社以外でも、秋吉家の交友関係について何か知りませんか?」
「うーん。秋吉さんちは、ここに家を買うときに中古で買ったんで、リノベーション会社と付き合いを続けてましたね。物件を買うのもうちを通す必要があるから、うちからその会社に中古住宅を紹介したんですよ。
リノベはうちもやってるから、うちに直接頼んでくれてもよかったんですが、そこはあれですね。先に声をかけたのが、そっちの会社だったってことで、仁義ですね。確か静岡中央市のリノベ会社の……なんだったかな」
「リノックスの前川さん?」
「ああ、そうです。旦那さんはその人と、ずっと取引してましたよ。最近は庭を整備するとかで、資材を運んでるのを見ました。ちょうどこの近くの道を通りますからね」
「ありがとうございます。たとえば、秋吉家のトラブルなどはご存じないですか?」
「いやあ、知りませんね」
吉田がそう答えたところで、あのう、と口を挟んできた社員がいた。先程の、受付の女性だ。
【前回の記事を読む】十六年前は植木屋で、今は総合サービス会社となり回覧板代わりに作った「じゅっとう通信」とは?
次回更新は10月18日(金)、21時の予定です。