「十燈荘の住民は、皆さんこの『十燈ネットワークサービス』というのに加入して、『じゅっとう通信』にアクセスしているんですね」
「はい。あと正確に言えば、この会社の人間は住民じゃないですが、仕事上使えることになっていますね」
「調査のため、私にもそのIDというのをもらえますか?」
深瀬がそう訊ねると、社長の吉田は少し表情を曇らせた。
「そういうのって、法律的に大丈夫なんですかね」
「違法なことはしませんし、必要があれば令状を取ってきます」
「あ、そうですか。それなら一つ作ってやって」
「ちなみに、『じゅっとう通信』に、houseというIDを使っている人がいるかどうかわかりますか? 英単語で家のつづりです」
「それも調べます」
吉田の指示で、先程の若い社員がパソコン画面に向かう。その時間に深瀬は吉田に質問し始めた。
「この会社は、秋吉家とはどういう付き合いがありましたか?」
「どうって言っても、普通ですよ。ゴミ回収とか、買い出しの代行とか、一番多いのはお嬢さんの学校への送り迎えですね。藤中学校までは遠いから」
「秋吉冬加さんですね。春樹くんはどうですか?」
「春樹くんは……小学校の頃は送り迎えしていたんですが、中学に入ってから姿を見ませんでしたね。詳しく聞けることでもないんで、事情は知らないんですが」
「わかりました。それで毎朝、この会社の車で送っていたのですか?」