【前回の記事を読む】雷に怯えへそを隠していた兄。妹に呼ばれ外へ出ると…玄関で黒光りする巨大バイクが待ち構えていた

第一章

雷と風

「よし行くか! 後ろに乗れ、翔太。マフラーに触るとヤケドするから気をつけろよ。足はここ、手はここ。合図したら俺の腰に手を回せばいいから。わかったか?」

「うん!!」

キュルキュル、ドカン!! ド、ド、ドドッと重低音と振動がシートの下から内臓にまで響いてくる。翔太はスクーターには乗ったことがあるが、大きなバイクに乗るのはこれが初めてだ。

仁おっちゃんが「行くぞ」と言うとバイクは静かに走り出した。そして通りに出るとバイクは徐々に加速していく。

「おおぉすっげー!」

仁おっちゃんの背中越しから風が舞い込んでくる。

「うわぁ〜風が俺に当たってくる」

そんなにスピードは出ていないのに体が風を感じている。何ていうのか……気持ちいい! 自転車じゃ感じない風だ。車や電車の窓から手を出す感じじゃなく、手にも足にも体中を風が駆け抜けていく。スピードが上がるとさらに風の中へ溶けこんでいく感覚……翔太は風の中を走っていた。

さらにスピードが上がる。

風が襲いかかってくる。風がバイクから翔太の体を引き離そうとしてくる。首に力を入れないと頭が飛ばされる。

「うわぁ!」

突然バイクが傾く、カーブだ。目の前の景色が斜めになる。地面にもう手が届きそうだ。ゲームセンターのカーレースじゃなく、リアルに景色が斜めになり、体が風とスピードを感じている。

楽しー! めっちゃ楽しいやん! バイクってこんな乗り物やったんや。自分が運転すればめっちゃ面白いやろな。翔太は興奮を隠せなかった。

仁おっちゃんが翔太の手を掴み、ぐっと腰に掴まるように合図した。

前を見ると高速道路の入り口だ! ひょっとしてぶっ飛ばすんかな? 掴まる翔太の手に力が入る。