アイアムハウス

前川も、追加で同じものを頼んだ。

「秋吉さんの方から、会社に連絡があったのですね」

「はい。ですが、ご存じの通り十燈荘は移住面積が限られているため、移住したいといってすぐにできるわけでもありません。所定の審査があります」

「その審査とは、土地購入を抽選で行うようなものですか」

「それもありますが、どちらかといえば信用調査に近いものでして。あそこの自治会が、土地購入権を取り仕切っているんです。十燈荘の住民に相応しいかというものを審査するようですね。治安や景観を守る目的で、私達が生まれる前から続いているものです」

「誰が何を審査するのですか? 少し話を聞いて来ましたが、自治会はあっても自治会長もいないそうじゃないですか」

「そうなんですよね。なのに、住民の意見がまとまるんだから不思議です。許可が出るかどうかは、投票みたいですよ。そういうシステムがあるようで」

「『じゅっとう通信』ですか」

「あ、それです。自分は見たことがないんですが、そこで話し合いがされてるみたいですね。聞いた話では、年収や資産や知名度や役職に関係なくフェアに行われるものだそうです。

噂では、この審査をクリアするための専用のセミナーもあるんだとか。ただ一つだけ例外と言いますか、特権を持つケースがあり、秋吉さんはそのケースに当てはまる稀有な方でしたので話を進めることができました」