ここまでの内容に不審な点はない。深瀬は話題を変えることにした。
「前川さんの会社は、普段どういうことをしているんですか?」
「ああ、当社はリノベーションとDXを合わせた言葉が社名で、色んなことをやってます。土地や物件のリサーチ、購入からリノベーションや施工、インテリアなどのデザイン、そしてローンを含めた資金計画の設計サポート、移住に至るまでの手配をワンストップで提供できることが強みでして。多くのお客様にご愛顧いただいております」
そう言うと、前川はノートパソコンの画面に、自社のホームページを映して深瀬に見せてきた。
「つまり、客に対して自分達にとって都合の良い物件を買わせることもできるというわけですか。十燈荘の、特定の物件を指定することも?」
それを聞いた前川は慌てた様子で答える。
「いえいえ、刑事さん。そのようなことは絶対にありません。もちろんお勧めしたい物件や立地はニーズに合わせてご提案いたしますが、ご要望やご予算などを最優先に考えますので」
「いや、冗談です。生まれつき物事を斜めに見てしまうもので」
まったく場違いなことに深瀬はここでニヤリと笑った。前川はその反応に瞬きする。
【前回の記事を読む】「十燈荘秋吉一家三人殺人事件」の自宅のリノベーションを担当した男性に死神刑事が話を聞きに行き…
本連載は今回で最終回です。ご愛読ありがとうございました。