第1章 変化の時代に変革を成功に導く公式とは?

立ちすくむグローバル化

その第1幕が2017年に誕生したトランプ政権による米国第一主義、そして、Brexitつまり英国のEU離脱であった。

そして第2幕が2018年からの米中貿易戦争。GDP世界1位と2位の繰り広げる関税導入合戦は貿易を委縮させ、中国の通信機器大手であるファーウェイ排除に象徴されるハイテク戦争も予断を許さない状況にある。

そして第3幕では新型コロナが発生、欧州の国境閉鎖とロックダウンという都市封鎖も世界は経験した。

そこにウクライナ侵攻が勃発し、米中対立や、グローバルサウスと呼ばれる新興国による第三勢力との価値観の相違が影を落とす。日本の近くには台湾問題もある。世界最先端の集積回路の9割を生産する台湾は民主主義国家を標榜し、中国と対立する。

図1-1 目まぐるしく変わる世界情勢

激動の時代に考えなくてはいけないこと

こういった世界情勢に加えて、感染症のリスク、温暖化問題といった企業や国家の枠組みを超えた問題が企業を揺さぶる。

かつて、在庫を持たない経営や消費地の近くでの生産は、経済効率上ベストな方策であった。しかし、これだけ激動の時代になると、ある日突然、半導体が入荷しないといったことが起こる。

トヨタ生産方式のジャスト・イン・タイムとは在庫を持たない経営ではなく、適正な在庫を持つことだと改めて認識させられた。

経済最優先の時代には、たとえそこが強権国家であっても、人件費が安ければ、あるいは大きな市場があれば、そこに生産拠点を持つことが普通であった。歴史の転換点を迎えた今、そこに大きく依存するのは危険だ。