少し希望が見える考えを思いついた原田は、田端に会う準備を始めた。準備といっても田端の大学までのアクセス確認だった。しかし、広い大学の中で目的の相手を探すことは不可能にも思えた原田は、スマホの中の地図を見つめて考えた。
(大学側の駅前で張っていれば、あいつが通るかもしれない……ふうっ……なんか、考えただけで心拍数が上がる……深呼吸しよう……)
田端に会いに行くはずなのに会いたくない気持ちがある原田は、とりあえず行動をひとつ起こすことで気持ちを落ち着けていく感じだった。
(とにかく田端に会って話をすれば、解決への糸口があるはずだ。だって、吉村は幽霊で、俺たちはみんな生きているんだから、誰も殺さないって協定を結べば、それで吉村の復讐も終わりになるさ)
こう考えて息をついた原田だったが、ふと違う考えもよぎった。
(もし、田端が吉村とコンタクトを取っていて、俺と同じようにみんなを殺せと言われていたら……俺を見たら殺しにかかるだろうか……もし、ちゃんと話ができなかったら……)
言いようのない危機感に襲われた原田は、とっさにキッチンから小型ナイフを取り出してカバンに入れる。
(念のため……身を護るために持っていくだけだから……とにかく目的は話し合いだ)
期限は10日間と言った吉村の顔を思い出した原田は、やり場のない怒りに拳で自分の腿を殴っていた。
【前回の記事を読む】「友達だって聞いたから、ちょっと安心して心を許しちゃった」という彼女の言葉に…