要件を急いでくれと不機嫌そうに言う藤川に、原田は田端の現状を聞いてみた。

「田端? あいつは俺と同じ大学だよ。学部は違うけど、入学式だったか……大学に入った当初に見かけたことあるし。でも、連絡先とか知らないよ。俺は友達じゃないし……そうだなぁ、今村だったら知ってると思うけど」

今村の名前を聞いて、原田は今村とも連絡を取りたいことを打ち明けた。すると藤川は電話の向こうで言葉を返す。

「俺、今村ともそんなに仲良くないんだよ。ただ、大学入った頃、コンパの人数が足りないからって、2回ほど飲み会に絡んだだけだから。今村のスマホの番号は知ってるけど、俺からおまえに教えられるほど今村と親しくないから、ちょっとパス」

「そこを何とか! なんだったら、今村に俺のスマホ番号を教えてくれてもいいから」

めんどくせ、と言った藤川の向こうから彼を呼ぶ声が聞こえ、それに応えるように藤川はスマホを切ってしまった。

足がかりになるはずだった相手からスカンを喰らってしまい、ガックリと肩を落とした原田だったが、藤川の大学に田端がいることがわかったことで、とにかく田端に会おうと決心をした。

それは、田端を殺すというより、彼も吉村を見ていないか探りを入れてみようと考えたのだ。

(あいつも吉村を見ていれば、俺のように悩んでいるかもしれない。そしたら、話し合いをしてお互いに殺さないという協定を結べば、殺人を起こさなくても済むはずだ)