電車の走る場所

そんな彼に、吉村は話を続ける。

「僕の気持ちが本気だってことを、原田くんにもわかって欲しいのよ。もう、心を固めてくれないと、人殺し役を他の人に頼むから、原田くん覚悟しておいてよね」

「あっ、ちょっと待って! 俺は殺され役はゴメンだから!」

「ふーん。じゃあ、原田くんが田端くんたちを殺してくれるんだね。それでは、きみの任務の期間は明日から10日間とする」

「は? 10日? 何言ってんだよ! ムリだよ!」

「それ以上かかったら、他の人に頼むから」

「ちょっと! 待って!」

原田はスマホに向かって叫んだが、電車の闇に浮かんだ吉村の顔はそこでぷっつりと消えてしまった。

スマホを持ったまま、原田は部屋の床に崩れ落ちた。吉村が奈美を取り込んだのは、彼とコンタクトを取らなくなった原田に連絡をつけるための手段だったのだ。

(逃げられない……)

吉村の声や奈美の顔、振り払っても湧き出してくるイヤな現実が脳裏に浮かんでは消えていく……スマホを握り床に座ったままどのくらいの時間そうしていたのか原田自身わからなくなっていた。

八方塞がりと思える中、ゆらりと立ち上がった原田は、現在の田端がいる場所を確認しようと決めた。田端の通う大学を割り出すため、時々連絡をとっている高校のクラスメイト藤川に電話を入れた。

「あっ、藤川ひさしぶり」

「なんだよ、原田。わざわざ電話なんて」

「ゴメン。ラインじゃ間に合わなくってさ」