三つ目の印象として特記したいのは、やはり千枚田でしょう。これも奥能登の一つの風物詩となっています。昔の厳しくも慎み深い農山村の生活の営みの象徴です。

今残されている千枚田では白米(しろよね)千枚田が知られています。海岸のへりに張り付くような棚田です。国道の真下にあり、大勢の観光客が休憩をかね立ち寄り歓声をあげています。

なるほど見事です。

千枚田とは数多いとの意でもあり、実際にも千枚以上の田圃があるそうです。昔の人の汗と油の結晶がこの小さな田んぼの実りになり、それだけに一層貴重な白米を作り上げたといえます。いまも大勢のボランティアの人たちの協力で作られています。

もちろんこの白米千枚田の他にもいくつかの千枚田が耕作されています。

「大笹波水田」も日本棚田百選の一つです。こちらも海に向かって河岸段丘の谷筋を切り開いた水田の千枚田ですが完全に区画整地されています。やはり自然の水田としては白米の千枚田ほど美しいものはありません。全国にある千枚田の中でも代表格の一つです。

以上、能登の三つの風物に今回の旅の思いを代表させました。

①旧福浦灯台、②総持寺祖院、③白米千枚田です。

日本海の荒海に突き出た能登半島で海を照らす明かりであったり、精神世界の明かりとしての禅ワールドの世界であったり、そして自然との格闘で生産したいのちの米。いずれも能登の厳しい自然の中で築かれてきた、人と自然の織り成す風物詩を代表しているといってよいでしょう。

もちろん能登の魅力はこの三つに尽きるものではありません。この他のいくつかの旅の印象を挙げておきます。