はじめに

北海道のど真ん中、富良野スキー場にほど近いペンション街のはじっこ、学校からは少し遠いけれど、森のとなりの自然いっぱいの家で、渓太は生まれ育ちました。小さいころからはだしのはだかんぼうで野山をかけめぐり、冷たい池や川での水遊び、冬は雪の中を転げまわっていました。その渓太とまわりの人たちのお話です。

子どもを取りまく環境はきびしく、子育てをためらう現状はとても悲しいことです。子どもは無垢で辛辣で、その喜怒哀楽は親にとってはとても刺激的です。

トイレに吊り下げた大判カレンダーの余白に、たまたま子どもの様子やことばを書きつけました。将来、子どもが自分の子育ての参考に、子どもの子どもたちへのタイムカプセルになれば……、きっと親子間に話の花が開くのではと思い、子どもの声がアンテナに響けば、トイレにかけ込んで書き、日々便座にすわっては書きました。“トイレ日記”のはじまりです。

渓太用と弟用の大判カレンダーを2冊、トイレに並べてぶら下げ、家族みんなで読んだり、書いたりで来客にも情報公開です。親はいそがしく、子どものことばを忘れがちですが、記されたことばは親の反省と心のささえです。

兄弟がはたちになるまでのカレンダーが合計41冊。ダンボール箱を開けて日記をよみかえすと、玉手箱をあけたようで、親は老けてもそのまんまの子どもがいました。その内の渓太の1歳から12歳までの日記12冊をここに整理し、まとめました。

文中には、親まで一緒にうんち・おしっこなどのことばが頻繁に出てきます。不愉快に思われるかもしれませんが、子どもにとっては成長の上で、欠かせないことばと思われます。どうぞご容赦ください。

あわせて渓太が高校までに描いた絵の一部を掲載いたしました。子どもたちの大人の常識から外れたことばは、若い人、結婚してる人、さらにじじばばには昔を思い出して、きっと元気になっていただけると思います。ハチャメチャなことも多く、あまり参考や教訓にはならないと思いますが、子育ても悪くないな、と感じていただけたならうれしい限りです。

右:1990年トイレ日記(落書きはけいた3歳) 左:1992年トイレ日記(落書きはけいた5歳)