其の弐

男は静かにそう言った。骸骨は吃驚した。

「あっ、いや、情けをかけるとかそんなことじゃねぇぞ、俺なぁ助手を欲しいと思っていたところなんだ」

男はまた照れたように笑った。

「俺なぁ、大町に住んでいるんだ。長野県の大町だ、分かるか? 部屋は空いているし、お前がそのつもりなら大歓迎だ」

骸骨は目を瞠った。まさかこんなことで仕事が見つかるとは思ってもいなかった。大町とはどんな所か知らなかったが、むしろ行ってみたいような気がした。だが上手くことばが見つからない。                                 

「ヨ、ヨロシクお願いします」

やっと口を出たのはそれだけだった。

「ようし、決まったぁ」

男は大声でそう言うと、身体をねじ曲げて右手を差し出した。骸骨は周章てて左手を出した。だがぴょこんとその手を引っこめると、おずおずと右手を差し出した。そして二人の手が確然と握られた。

「よおし、そうと決まったら飛ばすぞう、大町まで超特急だ」

男は朗らかに笑うとアクセルを吹かした。エンジンの音が急に高くなり、見る見るうちにスピードが上がっていく。男はなおも二言三言話していた。だが骸骨はうとうとし始め、やがて窓に凭れてしまった。

男はちらと見て、「眠ったな」と呟いた。

そして前を見ると鼻歌を唄い出した。二人を乗せたトラックは一路大町を目指して進んだ。もうすぐ夜が明けるらしく、東の空に微かな赤みが差していた。