よし、この会社みたいに建物の壁をアルミ鋳物で造ってみよう。しかし、全く猿真似では価格競争に陥るだけで意味がない。アルミの壁とアルミサッシを一体化した壁にしよう。
いや、サッシを省くことはできないか、アルミ鋳物自体に窓の機能を持たせてみてはどうか。松葉の今までの経験を生かして製品化した。これなら、我々中小企業の方が競争力を発揮できそうだ。
そして、松葉は自社のアルミサッシ工場から出た端材を溶かして原料化することで、大きなコストダウンを図ることを考えた。トン当り1万円のアルミ屑が20万円のインゴットに相当する。これはわが社にとって大きな強みとなる。
しかも、相手は大企業だ、コスト、なかでも間接コストは相当掛かる筈だ、十分勝算あり、と松葉は踏んだ。大相撲の小兵力士の作戦がよい。
相手が大企業だけに金バエみたいに纏(まと)わりつけば面白い。ときには胸を借りる気持ちで思い切ってぶつかるのもよい。神出鬼没の営業作戦など思い巡らすだけでも楽しい。
こうして、鉄鋳物の生産をやめ、完全にアルミ鋳物の生産に転換した。
アルミ鋳物の生産は、建築様式の変化と相まって順調に伸びてきた。
【前回の記事を読む】厄介物のシラスが資源に代わる!?シラスバルーンの実用化について工業新聞の記者から取材依頼。嬉しい反面新たな悩みが…
次回更新は9月3日(火)、8時の予定です。