第4章 アルミ鋳物の創業

松葉工業の創業期

生産コストを下げ、市場の実勢価格に近づけないと販売は難しい、どんなに素晴らしいものでも価格が高くては売れない、「物には値頃感というものがある」とマーケティングの先生から聞いたことがあった。

材料費の安い製品の代替品として、価格の高いアルミや工数の掛かってしまう商品を造るのには、無理があると思ったが、工業試験場の部長にはそのことは言わず、敢えて継続研究として取り組むということを告げた。

しかし、松葉はこの案件は保留にして、次の開発製品にチャレンジすることにした。

松葉は、新しいものを開発するに当たっては、これからの建築様式がどのように変わっていくかを考えることが重要ではないか、と考えてみた。

そのためには先ず、過去の建築の変遷を紐解いてみることが早道だと思った。

そこで分かったことは、建物の大小にかかわらず、今後は湿式工法から乾式工法に、現場組立方式から工場生産のユニット方式に代わっていかざるを得ない、それは、慢性的な建築労働者不足への対応、経済効率のアップのための工期の短縮が業界の命題になっているからだ、ということだった。

そうか、そのためには現場で組み立てる小さな建築材料より、大きな材料、例えば大きな壁にサッシを工場で組み込んで、クレーンで吊り下げて取り付けていく、これに似た方式は既にプレハブ住宅で実用化されている。