これをアルミ鋳物に変えていくことはできないか。松葉は、建築用アルミ鋳物製品を製造しているメーカーを調べることにした。
驚いたことに、上場企業の鐵工会社が最近アルミ鋳物製のビルの壁を開発し、販売開始していた。鋳物は、産業の「米」といわれ、工業界にはなくてはならないものだといわれてきた。しかし、鋳物業界は零細企業の集まりで、大規模化は難しい産業といわれていた。
なぜなら、機械化が遅れているというより、機械化が難しく、勘と経験に頼っている業界だったからだ。
鋳物の歴史は古く、その発祥は4千年前のことであるが、今でも鋳造法の原理は変わっていない。そして未だに熟練工に頼っている。昔と全く変わってないといってよかった。
上場企業がどうして中小企業の分野に進出してきたのか、松葉には不思議でならなかった。この会社は、超優良企業で多角的な事業の展開をしていた。その鋳物部門では、遠心鋳造法という製造法で鋳鉄管を造っていた。
松葉は、鋳鉄管を造っている工場を見せてもらったことがあった。鋳鉄管の型を高速で回転させ、そこに溶解した鉄の塊を投げ込むと、その鉄は回っている型にへばり付き、管ができるという製法だ。世の中には頭の良い奴がいるものだと感心し、感動すら覚えたのを思い出す。
このような設備で、同じものを大量に作るのは、大企業でないとできないだろう。しかし、その都度のオーダー製品は、大企業では小回りが利かないので難しい筈だ、と思って、その会社のカタログを取り寄せてみた。わが社で造っている製法とさほど変わりがない。金枠が大きいだけだ。