さようなら

ふりつもる落ち葉

去りゆく落ち葉

ふかふか ふかふか

足の下で やわらかくはずむ落ち葉

落ち葉をふらせる 銀杏の木

木にお別れを告げて

ふわふわ ふわり と

落ち葉は旅立つ 地上に旅立つ

わたしは こんなに楽し気な さようならを 見たことがなかった

だって落ち葉は 知っているから

地面に落ちたら 土にかえり

銀杏の木を育む 養分になることを

銀杏の木と 再会できる 自分の運命を

世界の仕組みを 知っているから

空の向こうへ

遠くを見つめるあの子は 空にすいこまれそうに 儚かった

季節が深みを増す 澄みわたる空気の 心地よい軽さ

誰もが健やかに暮らし いろづく葉に見とれていた わずかな狭間

見えていなかった 気づけなかった 危うい兆し

掬(すく)えなかった あの子の生命が 両手から零れ落ちる

こっくりとした 幸せな西陽がさす 美しい空の下

あの子は この世のしがらみを 宇宙に手放した

生きた時間が 時をかけて輝く

空にすいこまれてゆく あの子の生命は 一番 軽やかだった

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