終わりと始まり

規則正しく刻まれる針の音と

わたしの鼓動が重なって

この世の秩序を理解した時

窓の外の鳥たちが一斉に羽ばたいて

砂埃が舞い上がった

教会の鐘の音が聴こえる

乱反射する西陽の中で

ただただ美しく輝き舞う無数の砂埃

美しいものには目を奪われてはいけないのに

闇が押し寄せる気配が漂い始め

辺りは神聖な静けさを帯びる

わたしの人生の始まりの日

金木犀の日

金木犀の香りがする 秋風

僕は君を懐かしく想い出す

はらはら舞う落ち葉の一枚一枚に

君の顔がくっきりと 映っている

空を仰ぐと 自然が織りなす幾何学模様が

僕の内面のように複雑に広がっているから

「やっぱり人間も自然の一部なんだ」

と妙に納得してしまう 午後の陽射し

心にも身体にも鮮やかな香りが染みこんで

僕は一生このオレンジ色の香りを忘れない

と確信する

金木犀の日

僕のすべてだった 君を手放した日

秋の優しさに救われた人生の記念日