「好きなお酒を毎晩飲めないなら、早く死んだ方がよい」とか「タバコをやめて、タバコを吸えないストレスに苛(さいな)まれる人生なら、早く死んだ方がよい」とか耳にすることがあります。

言うは易く行うは難し、は私も同じですが、この事象は冷静に、そして客観的に考える必要があります。コロナ禍で人の交流が制限されていた頃、翌日のランニングが休みの週末の金曜日と土曜日の晩の一人飲みがささやかなストレス発散でした。この習慣は2年半続きましたが、後述するように、深酒すると睡眠の質が極めて悪くなります。

世の中がウィズ・コロナにシフトするとともに仲間との飲食の機会も許容されるようになったので、週末の自宅での飲酒習慣をやめ、平日の睡眠時間の不足を週末に補うようにしました。やってみるとできるもので、週末に飲酒をしなくてもストレスを感じなくなりました。まずは、一度やってみるというのが良いと思います。

毎日晩酌を楽しんでいる人も、もし、好きなお酒を1日1~2杯に抑えるとか3日に1回にすることができれば、10年で飲酒できなくなり病気で苦しむ代わりに、20年間健康な状態で好きなお酒を飲み続けることができるかもしれません。タバコが死亡率に及ぼす影響は、他の危険因子に比べて格段に大きいのが事実です。

岡田正彦名誉教授(新潟大学)によると、タバコをやめてから3年ほど経った人の死亡率は、吸っていない人とまったく同じだったといいます(岡田正彦著「ほどほど養生訓」[日本評論社、2007年]より引用)。今までタバコを吸ってきた人も、これから禁煙すれば間に合うのです。

病気になる前に、健康のために3%の努力をすることの意義は大きいと思います。先日、病気を患い自分のエンドポイントを意識されていた15歳ほど年上の先輩とお話をした際に、

健康に対する自分の意識・行動に対して「振り返ると後悔ばかりですよ」としみじみ語っていたのが印象に残っています。後悔しないように、自分の習慣を冷静に、そして客観的に見つめ直すことも必要なのだと思います。