それでは、当時の記録です。

健康のことを考え、山歩きを少しでもと思いつつ暫く行けなかったのですが、日頃から仕事上お付き合いのある戸田さんにお声掛けをしたところ、「予定もないから行きましょう!」ということになって、二人して直ぐに千尋岩から高山に抜けるルートの偵察ということで、「千尋」行きが決まったのです。

また、戸田さんもこのルートは、意外と歩いてないようで都道巽(たつみ)線の先端から歩こう!ということになって、巽道路経由となりました。

巽から千尋へのルートは、アップダウンもあって結構大変なことから、躑躅山に行くだけであればともかく、千尋岩迄行くのであれば一般的には小港道路からわらび畑経由となるのが普通で、それ程使うことは稀なルートとなっています。

「大変だ! いやなルートを選択するなー!」などと身勝手に思いつつ同行者の希望に沿うこととしたのです。

さらには、赴任に際し小笠原に持ち込んだマフラーに穴の空いたエンジン音が鳴り響く大塚の車を使うのではなく、戸田さん個人のカーナビ付き外車で行くこととなって、九時職住下から、汚れた服装で助手席に座るには少し躊躇しての短時間のドライブとなりました。

また、車内で一月五日のダイビングの際に、ショップの太田オーナーから、躑躅山で固有種である狂い咲きした一輪の「オガサワラツツジ」を観たとの情報から、戸田さんにそのことを話すと、折角だから「是非! 是非! 観に行きましょう!」ということになったのです。

九時二十分、巽道路の終点に到着です。「こうした外車をこんな山奥の終点に駐車してイタズラされないだろうか!」などと、会話しながら早々に出発です。

淡々とした比較的平坦な旧軍用道路のルートを進んでいきます。朝九時台ということもあって、掘割り山道の赤色土の地肌に木漏れ日が差し込んできて眩い感じがします。

どこか道端に「固有種の花なんか咲いていないだろうか!」などと、若干の期待を寄せつつ、道の左右をきょろきょろ眺めながらとなります。

九時四二分、旧軍用道路と分かれて、躑躅山のルートに入ります。林を抜けると中海岸からの波音が遠方から聞こえ始めます。天気が良いこともあって、本日の写真撮影が楽しみです。早速、眼下には中海岸が見事なまでに観えています。

斜面を少し登って、初めての休憩です。現在の位置関係について、戸田さんへの説明です。来た後方には、飛行場建設予定地であった所が、緑の絨毯(じゅうたん)の中に広がっています。

二見湾を眺めていると、戸田さんが懸命に話しかけてきます。一月十七日に海に出たのですが、その際に、湾内の係船浮標付近にクジラが入ってきたのだというのです。そんなことを、本日、お互いに天気に恵まれたことを喜びつつ、取り留めなく語り合うのでした。

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