そこで、本書の後半の2つの研究では教室での生徒のフィードバックを通じて教師が日常的に感知していると思われる快感情や期待感の高まり、あるいは反対に、マイナス感情や期待感の薄れに着目していきます。

こうした主観的認知は、自身のIS行動を通じて学習を上手く支えることができ、次のIS行動も上手くできそうだという教師のやり甲斐や動機づけに繋がり、IS行動のメカニズムを解明する研究内容として妥当だと思われます。

本書では、これから次節に示すような、教師の行動との関わりを指摘されている教師自己効力感(Teacher Self-efficacy [TSE])に着目し15,16、この概念の元となるセルフ・エフィカシー(self-efficacy belief)を提唱したBanduraの社会的認知理論17に基づいてISとTSEの関係の解明を試みようと思います。

第2節 教師の話し方について何がわかっているのか

さて、ここからは、インストラクショナル・スピーチ(instructional speech)、バイリンガリズム(bilingualism)、セルフ・エフィカシー(self-efficacy)などの本書が取り上げるより具体的なテーマごとに、

英語教師のIS行動と心理的背景について何がどの程度明らかになっているのか、それらについて考える上でこれまでなされてきた研究をいくつかピックアップしながら概観していこうと思います。