「こちら市役所の24時間受付です。お困りの市民の方々にはサービス・マンを派遣いたしますが、いかがなされましたか?」
「実はわたしは労働者でありまして、サービスを受けるほどの身分ではないのですが、実は困ったことにテレビが消灯できないのですが……」
「市民が就寝して脳波が穏やかになるとセンサーが察知し、テレビは自動で消灯します」
「友人が遊びに来ていて、静かに食事をしたいのですが……」
「テレビを一緒に見て、楽しんでみてはいかがですか?」
「それは試したのですが、グロテスクな政治的主張が受け付けられなくて……」
「テレビ・プログラムの内容は多岐にわたり、市民の好奇心をうまくくすぐるようにできていますから、チャンネルを変えてみてはいかがですか?」
「ミュージック・プレイヤーは自分の意思で消灯できるのですから、テレビにもそのような機能はないのですか?」
受付は上司となにか相談でもしているような気配がした。すると受付は深刻そうに、
「人は死ぬと天国か地獄へゆきますが、悪人が多すぎたために地獄はあふれ、死者がよみがえってゾンビとなり、旧人類社会は崩壊し、そのために箱船となって新たな出で立ちとなりました。しかし、お客様の今回のようなご意見は初めてです。想定内容が把握できませんので、こちらからは返答をいたしかねます。テレビは製作所で作られましたから、そちらへご連絡いただけませんか?」と答えた。
電話番号を示すと、受付は電話を冷たく切った。告げられた内容が内容だったので、スズキ青年は青ざめた顔をした。友人は心配そうにしていた。