大学病院での診察
僕の症状が出てから、兄も念のため病院で検査を受けた。すると、兄も尿たんぱくがいつもの3倍以上出ていることが判明した。その後、ゴールデンウィーク明けに、大阪の大学病院を受診することが決まった。
当時自分では気がつかなかったが、今振り返るとあの頃は体重がどんどん増加し、お風呂の中で足を押すとへこんだままであった。
“変な足。面白いなあ”と思い、よく押していたのを覚えている。
おそらく、尿たんぱくがたくさん出ることにより、余分な水分が貯留(ちょりゅう)し、全身が浮腫んでいたのだと思う。ただ、両親は僕がご飯をよくお代わりしていた(幼稚園の頃がウソなくらい食べていた)ので、太っているだけだと思っていたみたいであった。
入院前に、和歌山市内のデパートにおもちゃを買いに連れて行ってくれた。我が家にとってこれは重大な出来事であった。幼稚園児ぐらいだったか、親類とのクリスマス会でおもちゃの取り合いでケンカをしたことをきっかけに、うちではおもちゃを買ってもらえるのが、誕生日だけというルールができた。どんなに欲しいものがあっても、両親は買ってくれなかった。
デパートに着くと母は、「好きなものを買っていいよ」と言ってくれた。兄は当時流行っていたゲーム機を買った。
僕は某テレビ局のマスコットのぬいぐるみを買ってもらった。祖母が、「もっと大きな方がいいやん」と言ったが、10歳でぬいぐるみを買うことにどこか気恥ずかしさもあり、小さな方を選んだ。
おもちゃを買ってもらってから、みんなで食堂に行った。祖母が「入院したら食べられないから、好きなものを食べなさい」と言ったが、本当に食べていいのかわからず、思わず母を見た。
母も頷いていたので、大好きなエビフライを頼んだ。家では食べたことがないような大きなエビフライを見た時、うれしさと裏腹に今後どんなことが僕たちを待ち受けているのか不安になった。