表情認知は特殊

ヒトにとって他のヒトの表情を認知することは、ほかの物体の認知と異なる特殊処理である。

サッチャー錯視と呼ばれる現象がある。顔のパーツを上下逆さにして貼り付けた写真がある。顔の写真を上下逆さにして見ると、細部の不自然さに気づかない。しかし、正常な上下で見ると不自然さに気づき、不気味さを感じる。つまりヒトは、概要だけでなく細部まで把握して誰それと認知している。

図:サッチャー錯視

ヒトの表情には、文化にかかわらず、6つの基本感情パターン(怒り・嫌悪・恐怖・喜び・悲しみ・驚き)があるという(エクマンの説)[箱田裕司、都築誉史、川畑秀明、萩原滋,2010]。そして、ヒトの表情に反応する特殊な脳神経部位があることが知られている。

ベネチアのカーニバルでは、仮面をつけて着飾ったヒトが練り歩く。その仮面は美しくもあり、個性がないからか不気味でもある。中国にも、バリ島など太平洋の島々にも、日本にも、仮面をつけたり濃厚な化粧をしたりして演舞することがある。

それらは特定の感情を誇張している。顔や表情に敏感に反応するヒトの神経を刺激して、大きな効果をあげている。ヒト型ロボットは、ヒトの身体と頭部と顔を模倣する。武骨なコンピュータの箱と異なり、ヒト型ロボットなら、感情的で埋没型の新しいタイプのつながりを持ち得るかもしれない。

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