第1章 ヒト生体の情報処理
4 効果器官
① 手、骨、筋
第2の脳
5億年以前に眼は脳の一部として発生した。手は、400万年前に類人猿が直立歩行を始めたことで、第2の脳ともいわれる役割を果たしていく。
ヒトは眼と手で道具を操作する。現在のコンピュータはその延長にある。だが、コンピュータはまだ手の器用さを十分に生かしていない。
手と脳の進化の相乗効果
手、骨、筋という効果器官は、内部状態を感知しつつ、機械動作する。手には優れた皮膚感覚がある。一方、視覚は手の動き周辺を観察し、手指の動作を助ける。手の重要な役割は、人類史から見ると理解できる(p.31『図:生体の歴史』を参照)。
約6,550万年前に恐竜が絶滅した後、約400万年前にアウストラロピテクスが誕生した。320万年ほど前、ルーシーと呼ばれる類人猿がいた。脳の大きさは、チンパンジーと変わらなかった。が、骨盤の形から二足歩行していたことが分かった。二足歩行は、四足歩行に比べて25%のエネルギーで移動できた。
その後、240万年ほど前に、ホモ・ハピルスが登場した。ハピルスは、肉を骨からそぎ落とす鋭利な石器を作り利用していた。ハピルスの脳は、ルーシーの倍(だが、ホモ・サピエンスの半分)に大きくなっていた。道具を作るには、眼と手を正確に連動させる必要がある。それが脳に刺激となり、脳の発達を促した。
大きな脳はたくさんのエネルギーを必要とする。たくさん食べる必要があり、狩猟肉を食べた。肉をたくさん得るには、より高度な道具が必要である。こうして、手と脳の進化の相乗効果の連鎖が始まった。脳は次第に大きくなり、手指はますます器用になり、道具はどんどん精緻になった。
200万年前ごろ、ホモ・ハピルスは、ホモ・エレクトスへ進化した。脳の大きさは、ハピルスの1.5倍となった。エレクトスは、槍を使い、火で食物を消化しやすいように変えられた。
エレクトスは、100人くらいの集団で暮らしていたとされる。