聡一郎は微笑みながら言った。

「池田さんこそどうして?」

「待ち人来たらずなんですよ」

「え~~じゃ今日チャンス到来だなあ」

「え?」

「こんなところで会えるなんて、なんか縁がありそうなんだ」

聡一郎の言葉に、史の心が少し軽くなった。

その頃、知之は邦夫を呼び出して、行きつけのバーでグラスを傾けていた。

「邦、お前が落ち込んでどうする」

「しかしなあ知、信じられんよ、脊髄腫瘍とはなあ」

「今は下半身の痺れだけだ、すぐに車いすの生活になることはないだろうよ、良性でよかったよ」

知之は漠然とした不安を抱えながら、気丈に答えている。

「手術はできないんだよなあ」

「腫瘍の場所がね、手術するのは危険らしい」

「なんでお前が、知、俺くやしいよ……くそ涙が……」

「邦、心配かけるなあ、おれも悔しくて……」