さて、この列島に伝わる樹木・樹脂由来の香を焚くいわゆる「薫物 (たきもの)」もいいが、バラ由来や獣由来の香水等、西欧の社交界文化・宮廷文化の華やかさを支えた「香り文化の本流」にはスケールの違う凄味がある。生理的に異質であり、やはり極東の島国が「傍流」であるのを否めない。

私は傍流で一向に構わないのだが、とはいえ、日本の香道は、例えるならこじんまりした日本文化の一翼を荷う盆栽である。

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書は、直に人柄が出やすい、人柄そのものと言ってよい芸領域である。

そのなかで、運筆上「跳ね」に品格といえるものが出やすい、と私は思う。目立ちたいとすれば、正に「跳ねの箇所」をディフォルメしなければならない。

ただ、跳ねに功名心が出るような作品はどう見ても見え見えであり、何なら書道ではなく、「墨文字アート」という商業的な新領域スタートさせるのがベターであろう。今を時めく墨文字作家の跳ね文字は、品格ではやはり見劣りするように思われてならない。

書は、「内(うち)が命ずるがまま虚心に」筆を運ぶ、といきたいものである。

山岡鉄舟・西郷隆盛、武骨でいいなあ。一休禅師、個性がいいなあ。宮本武蔵、なるほど。

意外なのは勝海舟であり、明治維新でイメージする彼と書が結び付かないのである。女性的な文字であり、いわゆる「能吏」の字である。

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