2 そして二軒目……

それはそうだろう。そのまま燃え盛る家の前で立ち止まっていたら、犯人も火事に巻き込まれる危険性がある。何より犯行を疑われてしまう。なかなかうまい具合に犯人につながる話は聞けそうになかった。

「もうひとつだけ、いいですか?」

「なんだね?」

男性はあずみたちに目を向けた。

「一か月前の火事のときは、火の不始末が原因だったようですが……」

「うむ、そう聞いている」

男性の表情は更に曇った。前回の火事については、人がひとり亡くなっているのだ。しかも、男性からすれば櫻井氏は顔見知りのようだ。あまりいい記憶ではない。

「父とはお知り合いだったのですね」

今度は真琴が質問した。

「そりゃ、良ちゃんとは同級生だったからなぁ。わたしらふたりとも、家が近かったから、よく子供のころはお互いの家を行き来したもんだよ」

「それは知りませんでした」

思わず父親の幼なじみとも言える男性と遭遇し、真琴も親しみ深い表情をした。

「一か月前の火事の時は、良ちゃん、本当に気の毒なことだった……」

遺族でもある真琴の前で、男性は眉をひそめ悔みを言った。

「火事の原因が火の不始末ということなので、ご近所にもいろいろとご迷惑をおかけしたかと思いますが……」

「いやいや。あの日は、わたしはちょうど留守にしていてね。騒動の最中は、自宅にいなかったのだが、翌日帰って大騒ぎになっていることを知って本当に驚いたよ」

「ああ、そうだったのですね」