2 そして二軒目……
「ただ、その空き地まで少し時間がかかるから、ちょっとした用事だったら表通りに横付けにする車も少なくない。そのせいで路地の入り口が塞がれてしまって、住民は大迷惑だ」
男性は、さも迷惑をこうむっているという様子で言った。
「まぁ、そんな非常識な不届き者は、大抵ここの住民ではなく外部の者だけどな」
ここへ来るときに、真琴がきちんと駐車してくるからね、と言ってきたのは、生前、父親からそのようにしなさいと言い含められていたからだろう。
「そうなると、犯人は車でやってきて、わざわざその空き地に停めて、そしてここまできて犯行に及ぶなんてことするでしょうか?」
あずみの疑問に男性は更に顔をしかめて答えた。
「そこなんだよ。犯人が律儀に駐車してくるとも思えないしなぁ。きっと、どこかの変質者がやってきて一番手近な家に放火したんじゃないかね」
「そうですねぇ……」
あずみは、ライターが投げ入れてあったという方角をみた。
ただそうなると、わざわざ更地側に回ってライターを投げ入れたことが不自然なのだ。もし行きずりの変質者ならそんなまどろっこしいことをするだろうか……。