3 課題
余裕をみたつもりであったが、一時限目開始のギリギリの時間にふたりは大学に到着した。そのため、講堂の一番前の席しか空いていなかった。しかも、朝早く起きてひと仕事(?)してきたふたりは、揃いも揃ってその特等席で舟をこぎ始めた。
その様子を見た教授は、昼休みに教授室に来るようにとふたりに注意をした。
運悪く課題を多く出すことで有名な教授だった。
昼休みに入ってすぐ、ふたりは教授室に向かった。
「あの先生って、この前、課題レポートを十枚も書かせたので有名なのよ」
あずみは隣に座っていた学生が、スマホゲームをしていたことで課題をくらったことを思い出して言った。
「えぇ~」
真琴は、その時は講義に出席していない。父親が亡くなってすぐのことだったので、葬儀など色々と忙しい時期で欠席していたのだ。
「しかも、意味不明な、難しい内容の課題ばっかり!」
「まじか!」
「仕方ないよ。あの先生は厳しいので有名だし。みんな一度は洗礼を受けるしかない」
そんな調子で、ふたりは教授室の扉をノックした。
「どうぞ。あいていますよ」
すぐさま返事があった。
教授の名前は、関根(せきね)美和子(みわこ)教授。もとはこの大学の附属病院で看護師長まで経験し、実地でも経験豊富。背筋をピンと伸ばし歩き方も颯爽としている。実地での経験をぜひ若い学生に伝えてほしいと懇願され、数年前、附属病院の師長から大学の看護学部の教授の座に移った。