一介の会社員が亡くなったわけではないのだ。地元でも有名な実業家が亡くなっただけでもニュースなのに、その亡くなり方が焼死ときている。妙な噂を立てられることもあったことだろう。真琴は今回の火事もその不幸の続きなのだと説明した。

関根教授はそのあたりの家庭の事情にじっと耳を傾けていた。

しかし、隣の敷地も親戚が住んでいたとはよく思いついたものだ。

問題はあずみのほうだ。肉親の不幸もなく、家庭の事情は思いつかない。次は自分の番だと思うと胸がつまり動悸が速くなった。

「そうですか……。お父様のことは聞いていますが、残念でなりません。それに今朝の火事まで続けてご不幸があったとは、それは大変だったことでしょうね」

関根教授の口調がやはり少し和らいでいる。

「大体分かりました。それでは次、篠原さん。どうですか?」

関根教授はあずみに目を移して言った。

あずみは真琴のほうをちらりと見た。どうしようか、と助けを求める目だった。

「先生、よろしいでしょうか」

突如、真琴が割って入った。

「はい。なんですか?」

「篠原さんのことについても実はわたしと同じ事情なのです」

「同じというのはどういう意味ですか?」

【前回の記事を読む】「犯人は律儀に駐車してから犯行に及んだ?」「わざわざ更地側に回ってライターを投げ入れた?」不自然な放火事件の行方は…

 

【イチオシ記事】父の通夜に現れなかった妻。自宅階段の手すりに白い紐が結ばれていて…

【注目記事】もしかして妻が不倫?妻の車にGPSを仕掛けたところ、家から20キロも離れた町で、発信機が止まった!