一介の会社員が亡くなったわけではないのだ。地元でも有名な実業家が亡くなっただけでもニュースなのに、その亡くなり方が焼死ときている。妙な噂を立てられることもあったことだろう。真琴は今回の火事もその不幸の続きなのだと説明した。
関根教授はそのあたりの家庭の事情にじっと耳を傾けていた。
しかし、隣の敷地も親戚が住んでいたとはよく思いついたものだ。
問題はあずみのほうだ。肉親の不幸もなく、家庭の事情は思いつかない。次は自分の番だと思うと胸がつまり動悸が速くなった。
「そうですか……。お父様のことは聞いていますが、残念でなりません。それに今朝の火事まで続けてご不幸があったとは、それは大変だったことでしょうね」
関根教授の口調がやはり少し和らいでいる。
「大体分かりました。それでは次、篠原さん。どうですか?」
関根教授はあずみに目を移して言った。
あずみは真琴のほうをちらりと見た。どうしようか、と助けを求める目だった。
「先生、よろしいでしょうか」
突如、真琴が割って入った。
「はい。なんですか?」
「篠原さんのことについても実はわたしと同じ事情なのです」
「同じというのはどういう意味ですか?」
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