2 そして二軒目……
少しカーブになっている路地を、住宅五、六軒も進んだだろうか。ふたりは、二股に分かれている場所に行きついた。その二股の道の突き当りの場所に、木造の小屋のような祠(ほこら)がある。祠の扉を開けて中を覗くと、小さなお地蔵様が鎮座していた。
「住宅の中に、今時こういうお地蔵さんがあるって珍しいよね」
「そうねぇ」
真琴も父親の実家の集落のことながら、知らなかった様子だ。
「供えてあるお花がまだ新しいよ。お参りする人がいるのかな?」
あずみは祠の中の地蔵の前に花が供えてあるのを見て言った。
「わたしたちも、お参りしていこうか」
「うん、事件解決のためにもね」
ふたりとも、物珍しさからお地蔵様を拝んでいくことにした。
その時。
「お嬢さんたち、この辺りの人かね」
驚いて後ろを振り返ると、男性が立っていた。年の頃は五十代半ばくらいだろうか。手に花を持っている。
「あ、すみません。すぐ移動します」
慌ててあずみは答えた。
「別に構わんよ」
男性は花を入れ替える準備を始めた。定期的に花を入れ替えているのは、この男性のようだ。
「ここの団地の方ですか?」
「そうだよ。お嬢さんたちは見ない顔だね」
「はい。以前うちのおばあちゃんがこの団地に住んでいたんです」
「ああ、そうかね」
花を供え終えると、少し拝んでから男性はあずみたちに向き直った。