店舗物件探しの為、家から一番近いコンビニに住宅店舗物件情報誌を買いに行った。情報誌は二~三誌有り、どれもとても分厚く、持つのも一苦労する程だ。その中の一冊を選び、その中で家賃の一番安い店舗物件を一つ選び、早速見に行った。
一つの理由は、私達にはあまりお金がなく、毎月高い家賃を支払う気は毛頭なかったからだ。兎にも角にも、私達夫婦にとっては一番安い物件が一番良い物件だったので、沢山の物件を見ても所詮意味が無いと思ったからだ。
不動産屋さんに案内してもらったその一番安い物件は、シャッターの閉まった店が数軒ある、寂れて人通りも疎らな古くて小さな商店街の一角に有った。
店舗の前の道幅も狭く、勿論、駐車場など有るわけもない。そして中に入ると、古くて暗くて狭くて、窓すら無い。
木造二階建てのこの物件は、二階が住居で誰かが住んでいるらしく、窓から吊るしたハンガーの洗濯物が風に揺れている。
物件現場で、不動産屋さんを横に、この店舗物件を良しとするかを、突っ立ったまま、夫婦二人会議の議案に上げる。良し、と決定。
激安物件であり、家からも近く、車で二十分というオマケ付きでもある。オマケまで付いた物件なのだからしめたものだ。このオマケ付き優良物件を借りるかどうかの会議は簡単で、所要時間、約十分。
我が家の会議時間が約十分と比較的短い理由は、成人となってからの発症だと思うのだが、私には、すぐ出した答えでも長時間考えた答えでも所詮一緒だと思うクセが有るからだ。
どうせ一緒なら一刻も早く結論を出そうと思ってしまう。世間ではそれをセッカチとかワガママなどと呼ぶようだが、私はそれのかなりの重度な症状の一刻病(いっこくびょう)だ。
治療薬はないものかと思う。もし、一刻病に効く治療薬を開発してもらえるものなら、飲み薬よりも塗り薬だと有り難い。
この持病のお陰で決断が早いのかもしれないが、それにはプラスの面も有るものの、長時間物事を掘り下げて考える忍耐力が欠如しているというマイナス面もある。また、どうにかなるサ的性格は私達夫婦の大共通点(だいきょうつうてん)でもある。
が、しかしここは我ら夫婦のプライド上、似た者夫婦の織り成す早技、ということに是非ともしたい。転勤で九州に来て二年。改めて、家族四人にとって九州の地は新天地となった。
【前回の記事を読む】まるで生き物のように私達家族に絡みついてきた災いという神縁を、一つの例として読んでもらうことで…