序節 古事記の投げかける謎――古事記の秘める数合わせ
Ⅰ「10引く1は9」という数合わせ
Ⅳ 9の分割、2・1・2・1・3 Ⅳ− 1 Ⅰ− 1で触れた作池記事は5天皇朝に分散しており、重複する最後の10番目の池を除外して、垂仁天皇朝の 3 池分を最後に回すと、2池、1池、2池、1池、3池の順に作られている。故に「10引く1は9」の9は 2 ・ 1 ・ 2 ・ 1 ・ 3 に細分されている。
Ⅳ− 2 Ⅰ− 2で触れた景行天皇の皇子のうち、「10引く1は9」であった9皇子の同母兄弟数を数えると、列挙順を逆にして、2人、1人、2人、1人、3人の順である。故にここでも9が 2 ・ 1 ・ 2 ・ 1 ・ 3 に細分されていることがわかる。
Ⅳ− 3「 国神」と「天神」という語句を数え上げてみると、古事記には「国神」が9例、「天神」が32例現れる。それぞれに①から⑨、1から32までの番号を付して登場順に並べると、
1 ~ 5 ①② 6 ~11③12~16④⑤17・18⑥19~24⑦⑧⑨25~32
となる。つまり9例の「国神」を32例の「天神」が5グループに割り分けており、分けられた「国神」は 2 ・ 1 ・ 2 ・ 1 ・ 3 というグループに分かれている。故にここにも9の細分、 2 ・ 1 ・ 2 ・ 1 ・ 3 が認められる。
Ⅳ― 4 Ⅱ― 6 で述べたように、吴公4例、吴服1例、吴人2例、吴原2例、合わせて9例が、吴床の5例とセットになっていたが、真福寺本は、吴公の初例の吴を矣に似た字体、 (吴の口をムに替えた字体)で記しており、これを原型と見れば、上記の9 例は、 公1例、吴公3例、吴服1例、吴人2例、吴原2例となり、ここに順不同ながら9の分割 2 ・ 1 ・ 2 ・ 1 ・ 3 が現れる。
Ⅴ(5・7)の数セット Ⅴ― 1 古事記冒頭の別天神5柱と次の神世7代に( 5 ・ 7 )セットが認められる。
Ⅴ― 2 女陰を示すホト・ミホトの表記を調べると、訓字表記と音仮名表記とがあり、訓字表記の「陰上」が3例、「陰」が2例で、計5例。音仮名表記では、ミホトが2例(美蕃登・美冨登)、ホトが5例(番登1例、冨登4例)あり、計7例。故にここにも( 5 ・ 7 )セットが見いだせる。
Ⅴ― 3 甲類ソ音の音仮名には蘓・宗・素の3文字がある。蘓が主たる音仮名であって全22例であるが、歌謡以外には7例あり、宗は3例、素は2例である(歌謡に用いられるのは蘓だけである)。故にここにも 3 + 2 = 5 例と7例とで( 5・7 )セットが潜む。
Ⅴ― 4 真福寺本によれば、「命」の異体字である「今(令)」が上巻に5例、下巻に7例ある。真福寺本の字体が原型に近いとすると、ここにも( 5 ・ 7 )セットが潜む。
Ⅵ 5の3・2分割 Ⅵ― 1 Ⅴ― 1 の別天神 5 柱が、初めに3柱、次に2柱の順に掲げられる。
Ⅵ― 2 Ⅴ― 2 に示した通り、訓字表記のホトにつき、「陰上」が3例、「陰」が2例。
Ⅵ― 3 Ⅴ― 3 に示した通り、甲類ソ音の音仮名につき、宗が3例、素が2例。 Ⅵ― 4 皇子女のうち、性が逆転せしめられている皇子女が、中巻に3名、下巻に2名。
Ⅵ― 5 Ⅱ― 5 に示した通り真福寺本によれば「竺紫」が3例、「笠紫」が2例。 Ⅵ― 6 Ⅱ―6で見た吴床5例が、他の吴熟語(吴人と吴原)によって連続2例と連続3例に分割されており、連続2例は「吴床」、連続3例は「御吴床」である。