70歳過ぎのある患者さんが言いました。

「男には3つの死がある。男性の死、社会的な死、本当の死。私は3つを同時に迎えたい」と。それは確かに理想ですが、現実では突然死でしか叶いません。人間には運命があり、いつ負の螺旋階段に突入してお迎えが来るかは誰もわかりません。

こんな話をできる診察は泌尿器科ならではのキャッチボールでもあり、毎日の診察は結構楽しいもので、高齢になっても意欲、気力を保ち、脳のエネルギー消費を増やすことは、認知能力の維持につながります。苦もあり楽もあります。

高齢者の排尿障害の日常診療は、薬の処方、理解だけでなく、生活の自己管理を促すことが必要であり、学習し、気づき、身につけていくための生活指導を診療の中でしていくことが、私のやり方です。

尿の色の観察も比重を見て体の状況を判断する上で役に立ちます。季節に対応した行動のアドバイス、生活の状況観察、泌尿器科疾患の管理等を平常診療で行います。

そして、アドバイスをし、学習の手助けをするのが継続診療の意味合いです。薬だけを求めて来院し、自分流の思考に終始する人にとっては薬の効き目以上のものは何も与えられません。

個々の生活を客観的な目でチェックする立場がクリニックにはあり、それを機能させることが相互に大切であると考えます。そして、高齢になっても相互に学習、検証の機会でもあるのです。

▼ 衰弱していく高齢者達

一方で、夜間頻尿が改善せず、生活指導で介入しなければならない人は、普通に暮らし、活動レベルが低くなっている人が多く見受けられます。特にコロナ感染が蔓延している時は生活リズムを見失っている人を多く見かけました。

何をすることもなく座る時間が長いと、うたた寝をしたりして昼夜逆転で夜間排尿回数が増えてしまいます。2022年は、コロナ下で散歩も抑制している人もいて、当然のことながら夜間排尿回数も増えています。

また、暑熱下に家に閉じこもる人が多く、昼夜逆転で夜間頻尿が増えた人も多かったです。

「朝や夕方の風のある日とか、外出のチャンスはいくらでもあったのに。自宅にこもっていると先入観で運動の機会を失う判断ミスが起きますよ」とよく言っていました。

家で座位時間が長く、無為に過ごし、これが長期化すると痩せ細っていく可能性が高くなります。これがフレイルの入口です。

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