第一話  ジュピターと不思議の剣

「西方の雪深い山脈にたどりつくには数多くの森と谷や渓谷を越えねばならない。途中には恐ろしい魔物や獣が出没するという国も多い。山脈を越えきるには何か月もかかるらしい。そんな危険いっぱいの国々を無事に旅することができるのだろうか…。明日はトムのために、彼の家族の墓を作ってやらないといけない」ユージンはずっとそんなことを考えていた。

「とにかく旅のことは後でゆっくりと考えよう…」そう思いながらユージンも眠りについた。

(その三)

次の朝、ジュピターをつれてトムとユージンは近くの森に入った。森はいつものように霧でおおわれている。

そこに朝日が反射して微かに光って見える。彼らが歩き進むと、彼らの後を追うように霧も微かに動いた。道の両端には鬱蒼とした熊笹が生い茂っている。

「森のお婆(ばあ)はいるだろうか?」

ユージンはそう思いながらジュピターに続いて前へ進んだ。

お婆は、昨日ユージン達が湖から村に戻った時、彼らにブレッドを分けてくれた。ユージンとトムが森の中に入ったのは、そのお婆のところに行くためだ。

昨日、ユージンとジュピターが盗賊に襲われたと知って村に引き返した時、村の焼け跡で白髪のお婆がさまよっていた。

森に住んでいるお婆には村で暮らす息子夫婦がいて、そこにかわいい玉のような小さな女の子がいた。お婆はその孫娘に会いによく村を訪れていた。

ところが、その息子夫婦の家は盗賊に襲われ無残にも焼き払われていた。そこには息子夫婦の姿も孫の姿も消えていたのだ。どこかに逃げて無事でいてくれることを願いながら、お婆は焼き払われた村のあちこちを必死で探し回っていた。

森の中のお婆のところに行っている間、ヨランダと二人の兄弟はラニーとリチャードと一緒に家に残り、荒らされた家の後片付けを手伝った。

ユージンがそのお婆を見た時、お婆はちょうどトムの家の近くで呆然と立ち尽くしていた。どうやらお婆はトムの両親が盗賊達に殺されたことを悟ったらしく、ユージンとジュピターを見ると、彼らに近づいてきた。

そして、お婆の背中に背負っていた大きな袋をおろしてブレッドを取り出すと、力のない声で

「お腹がすいたらいつでもお婆のところにおいで。お前達の食べるものくらいはあるからな…」

そう言って少し微笑むと、お婆は肩を落として立ち去った。