第一話 ジュピターと不思議の剣
(その六)
想像もできない旅がトムと三人の兄妹を待っている。母を救い出すための旅立ちだ。ユージンは旅先で起こるいろいろなことを考えながら、朝お婆の家でもらってきたブレッドを口にした。
以前、西方の方角にある山岳地帯に盗賊の集団が立てこもっていると村人から聞いたことがあった。盗賊は付近の峠を越える旅人を待ち受けて襲ってくる。時には周りの集落に出没して住人達を襲うこともあった。
盗賊の集落は周囲が防壁で囲まれた要塞になっており、王国の軍隊も容易に近づくことはない。
さらに、彼らの要塞に行く迄にも山賊達の砦がいくつも点在しており、何重にも要塞の防御を固めていた。盗賊達の本拠に到達するためには、これらの砦をすべて打ち破って越えて行かねばならないのだ。
「野宿をしながら盗賊達の居所を見つけることができるのだろうか? そしてたとえ、彼らの居場所を見つけても自分たちの力だけで母や連れ去られた村の女・子供達を救えるのだろうか…」考えるだけでも、その使命をうまくやり遂げるのは容易ではなかった。たとえ王国の訓練された軍隊であっても山賊達を降伏させるのは一筋縄ではいかないだろう…。
「母は無事だろうか。他にさらわれた子供達はどうしているのだろう…」彼の脳裏にいろいろな不安が襲ってきた。
「旅に出るまでに、弟と妹にもしっかりと心構えを教えておかねばならない…」