そんなことを考えながら、彼は無邪気に朝食をとる二人を見つめた。タイガーとフレイジャーがジュピターに甘えてじゃれていた。そんな時にもジュピターはユージンのただならない決意を感じ取っていた。台所をユージンはゆっくりと歩きながら思案し考え続けていた。

行く手に待ち構える大きな試練を感じながら、彼は誰も頼らず進まねばならない緊張と真剣勝負から絶対に後退り出来ない事を自覚せねばならなかった。

自分はもう子供ではないのだ。全責任を背負って厳しい現実の世界に入っていかねばならぬ… と感じていた。ジュピターは、まるで彼の心の動きを細かく読み取るように耳をそばだてていた。

「きっといろいろな困難が待ち受ける辛い旅になるだろう。果たしてまだ幼い弟や妹がそんな長い旅に耐えてくれるだろうか…」次々と疑問が浮かび、彼の頭の中は心配事でいっぱいになった。

すると静かにジュピターがタイガーとフレイジャーを引き連れてユージンの足元にすり寄ってきた。そして、ジュピターはユージンを澄んだ青色の鋭い目で見つめた。

「そうだなジュピター。おまえが一緒だったな」そう言ってジュピターに微笑んだ。ジュピターの澄んだ蒼い目の奥には神秘的な深い輝きがあった。

その輝きはユージンの心に矢を射るかのような強い一撃と勇気を与え、彼の不安や迷いを吹っ飛ばすかのように、力強いそれも感情や一時的な抑揚ではない圧倒的で溢れ出るような力を引き出してくれた。ユージンは自分の中に深い覚悟が芽生えるのを感じていた。

「どんなことがあっても、絶対に皆を救ってみせる…」心の中で彼の不安はいつの間にか自分でもこれまで経験したことのないような強い決意に変わっていた。

しばらくするとトムがやってきた。トムは筋骨隆々とした白馬に乗って走ってきた。白馬はトムが日頃から可愛がっていた「流星(りゅうせい)」という雄の駿馬だ。