【前回記事を読む】村が盗賊に襲われ、両親を殺された親友。「父上も母上もあの黄色い花の丘が大好きだった。そこに墓を作ってやりたい。」と言うと…

第一話  ジュピターと不思議の剣

(その六)

黄色い花の咲く丘で皆と真昼に会うことを伝えたトムは、流星に飛び乗り手綱をとった。「近所の村人が父と母の遺体を清め棺(ひつぎ)造りを手伝ってくれた。その棺をこの丘まで運んでくる。この丘に両親を埋めてやりたいのだ」そう言うと、手綱を引き、馬を走らせて去った。

トムの後ろ姿を見ながら、彼に「わかった」とユージンが応えた。

外にはすでに太陽が上空に昇り、すっかり明るくなっていた。

遠のいていくトムの姿を見た後、黄色い花の丘の方角を眺めながらユージン達も丘にむかって歩き始めた。

ユージンの家族も馬を飼っていたが、馬達は盗賊集団の襲撃に驚いて逃げてしまった。どこに逃げていったのか行く先がわからないまま、しばらく時間が経った。村が落ち着けば戻ってくるかもしれない…そう思ってユージンは馬達が戻ってくるのを忍耐強く待っていた。

ユージンと幼い二人が村を抜けて進んでいくと、行く手一面に黄色い花でいっぱいの丘が見えてきた。雲一つない晴天の空は青く、黄色い花畑のような丘との対比が鮮やかで美しかった。

そして、青空のさらに彼方に目を凝らすと白い雪で覆われた雄大な山脈が見えた。丘が近づくにつれて黄色い花の香りが一面に漂い始め、彼らを迎えてくれた。額に汗をかきながら、そのまま坂を上り、歩みを進めていくとやがて三人は村全体が見下ろせる丘にやってきた。

その黄色い花の丘はゆったりとした傾斜になって壮大な景色が広がっていた。空気が澄んでいて、一面の黄色い花に太陽の光が跳ね返りキラキラとまぶしく輝いていた。一つひとつの花が彼らに微笑んでいるように迎えてくれた。爽やかな風がみんなの頬を撫でると、一面に広がる草花の絨毯の上を揺らめくように吹き抜けていった。

丘の上に広がる黄色い花園のずっと先には真っ白な連峰が聳え、その奥には真っ青な青空がどこまでも続いていた。この丘を歩き続けて行けば、やがてその青空にたどり着けるように見えた。

眼下には谷間に広がる村が見えた。

村の多くの家が盗賊達の襲撃に遭い火をつけられた。それらの焼け跡がこげ茶色に見える。

襲われた家はどうやら湖から少し離れた一帯に集中していた。それは森の精が棲むあの深い薄暗い森に近い一帯であることが一望できた。

その森は、黄色の花の丘とはまったく別世界のように霞がかかり、うす暗い闇が広がっているように見える。

その丘の一番眺めのよいところに着いた。するとそこにはすでに二つの穴が掘られていた。

「これはトムが掘った穴だ。ここにお墓を作るつもりだ。トムが今日の朝、流星に乗っていい場所を見つけたと言っていたのはこの場所のようだ…」