第一話  ジュピターと不思議の剣

(その一)

目が覚めた。まだ辺りは薄暗い。外は冷たい風の音がする。真上を向いたままゆっくりと目を開ける。耳を澄ましてじっとしていると、かすかにまだ残っている暖炉の火の音が聞こえた。

身体を包む毛布は白い煤(すす)でうっすらと覆われている。ユージン(悠仁)が少し動くと毛布のほこりがかすかに舞い上がった。

枯れ草を編んで作った筵(むしろ)を数枚重ねた寝床は、自分の身体の温かみがこもっていて、心地よく温かい。

隣で静かに眠っている妹のラニー(羅新)が、自分の腕に手を載せたままでいる。

昨夜はラニーに即興の物語を聞かせてやった。目を輝かせて、どこかを見つめたようにラニーは聞いていた。三十分ほどするといつのまにかすやすやと眠りについていた。

ラニーは泣き疲れてお腹がすいているに違いない…。そう思いながらユージンは昨夜の出来事を思い出していた。

昨日は夜遅くになってから、村でもらってきたブレッドと野菜スープで食事をした。弟のリチャード(理査徳)も疲れ切っていた。ラニーはそれでも自分のブレッドを泣きながら愛犬タイガーに分けてやった。

やさしい妹だ。でもよほど悲しかったのだろう。お腹がすいているのにほとんど食事をせずにそのまま泣き続け、寝てしまった。

リチャードも憔悴した表情のまま無言で食べ物を口にしていた。そしてすぐにそのまま眠りについた。二人の上に毛布を被せてやるとすぐに、ユージンも横になり眠りに落ちた。

リチャードのほうを見ると、彼は愛犬フレイジャーを抱きしめたまま、まだぐっすりと眠っているようだ。

たった一日で村の景色はすっかり変わってしまった。

突如現れた百人近い盗賊団が、剣や弓などの武器を駆使して、村を思いのままに蹂躙していった。家々は焼かれ、女子供は捕らえられ、抵抗する男達は皆殺しにされた。捕虜となった女子には奴隷として売られる運命が待ち構えている。

平和だった村はまさに地獄と化した。