弟と妹にとっては恐怖と悪夢の一日だったに違いない。
彼らの家にも山賊の略奪兵達がやってきた。母は危険を悟り、彼らを屋根裏に潜ませた。運良く二人は見つかることなく彼らは連れていかれることを免れた。
しかし、母が捕らえられて連れていかれた。その時、恐怖で二人はじっと耐えていた。声を出せば自分達もどうなるかわからない。
母は盗賊が家に入ってくる直前、二人の幼い兄妹が恐怖のあまり泣き叫んで自分について来ないかと恐れたが、二人を優しく抱き寄せた後、二人を睨みつけ、どんなことがあっても我慢して出てこないように諭した。大事を察した二人は母に言われたとおり、ひたすら堪えて兄が戻るのを待った。彼等にとって長い恐ろしい一日だった。
目を入口のほうに移すと、玄関の扉から弱い朝日が差し込んでいる。
「ジュピターはどこにいるのだろう」ふとそう思い、ユージンは少し頭を持ち上げて部屋を見た。
すると納屋への渡り廊下の近くで横たわっているジュピターがいた。いつもの場所だ。
寝返りを打ってラニーの寝顔を覗き込むと、「お兄ちゃん」と何やら夢を見ているのか寝言でかすかにつぶやいた。無邪気でかわいい妹だ。ユージンは彼女の頬を指で撫ぜてあげた。
「今日は二人が元気になるようなお話を聴かせてやらねば…」そう考えながらユージンはまた眠りについた。彼も疲れ果てていた。