第二章 信仰 夏

新しい日本人、大袈裟に言えば、そういうことだ。だから、私は彼から目を離すことができなかったのだ。彼は実に多くの示唆に富んでいる。彼は永遠であり、価値の限界の模索であり、また青春への回帰である。

私もそうだが、彼もまた無常を支持しない。無常は信仰の障害でしかなく、神の普遍性を著しく棄損せしめる。瞬間は永遠と離反し、私たちは存在の機軸を失う。そして、それを回避するために決して避けては通れないのが愛の問題(matter)である。

なぜ家族は婚姻によって形成されなければならないのか?

それは、神前を経ないものは普遍的な価値を持ち得ないからである。おそらくここに来るべきものは、家族と故郷の二つであろう。

鎮守の森によって故郷は守られ、契約によって家族は一体化する。そこでは霊的な存在によって統合が図られ、異邦人であっても拝礼と契約を確定させることによって、昨日までとはまったく異なる地位を得ることとなる。

そして、その障害となっているのが無常である。彼は信仰を得ることによって過去を克服し、今という瞬間を永遠と結びつけることで、愛の定義付けに成功した。だが過去の克服の過程においての暗中模索は、青春時代の周囲との幾つもの衝突もまた生み出してしまっていた。

彼の、おそらくは本意ではなかった攻撃性が、一つの善的な体系にその落としどころを見つけるまでにかかった時間とストレスは、しかし、ようやくここに来て出口を捉えつつある。そして、そこに私も現状打破のヒントを得たいと考えているのだ。きっとこれは最後のチャンス。

なぜならば彼は回帰を感じているからだ。