冬の空は、春や夏の空と違って、淡くやさしい色をしています。
今日は雲もほとんどなく、やわらかな太陽の光に照らされて、雪原がキラキラと輝いていました。
ここに来るたび、リリーは、幼い頃に両親とダイヤモンドダストを見たことを思い出します。
とてもとても寒い晴れた朝には、空気中の水分が凍って宝石のように輝いて見えることがあるのです。それを、宝石のダイヤモンドになぞらえて「ダイヤモンドダスト」と呼ぶ。そう教えてくれたのは、リリーの父親でした。
目を閉じれば今でも、そのときの幻想的な風景をまぶたの裏に思い描くことができます。
「今年は見られなかったけれど……来年は見られるかしら」
リリーは、村のどんな季節も大好きでした。
冬が長いからこそ、この村ではダイヤモンドダストも起こりやすく、澄んだ空気のおかげで星もきれいに見えます。
待ち遠しい春がやって来れば、あちこちに花が咲き、村は一気ににぎやかになります。年に一度の大きなお祭りがもよおされるのも、春がいっそう深まった頃です。
夏には、植物たちがひときわ元気に生い茂り、森の動物たちも活発に動きます。全ての生き物に力があふれ、いきいきと輝く季節です。目にしみるほどあざやかな青空の色が、リリーは大好きでした。
秋になると、村の人々は大急ぎで冬支度を始めます。短い秋は、色づいた木の葉と共にあっという間に散っていき、また長い冬がやって来ます。
くるくると巡っていく季節のどれもが、リリーにとってかけがえのないものでした。
「フルール!」
少し大きな声で呼ぶと、走り回っていたフルールはすぐにリリーのそばに戻ってきました。