「あら、美紀さん。あなたも見にきたのね」カフェに来ていた上田さんである。

「ええ。見たことがないのでどんなものか知りたくて、出かける前にちょっと寄ってみたのよ。たくさんあってびっくりしたわ」

「本当よね。私も初めてよ。ちょっとすてきなお花のシールを見つけたので、トイレに貼ってみようと思っているの。これ、どうかしら」

上田さんは二枚のシールを選んでいた。大きなバラの花と小振りのバラである。

「まあ、トイレが華やかになるわね。貼ったら、見せていただけるかしら」

「もちろんよ、今日中に貼るつもりよ。美紀さん、これからお出かけよね。もし今買うのでしたら、持って帰ってあげるわよ。夕方渡せばいいから」

「そうね、お願いしようかしら。廊下に少し貼ってみようと思っているの。何といっても百円ですものね。いつでも取り換えがきくから、気軽に買えるわ」

二人はそろってレジに行き、支払いが済むとシールを上田さんに預けた。

「すみません、よろしくお願いします。あとで取りに伺いますね」

「はい。では、行ってらっしゃい」

駅に向かいながら、健一の家ではどこかに貼るところがあるかしらと考えていた。時計を見ると十二時半。新宿まで二十分だから、ちょうどいい時間だ。 

電車は、休日の昼とあって結構混んでいた。美紀は健一との生活がどうなるのかまだ想像がつかない。今回のように急に出張になることもあるだろう。健一のところで一人で待つより、やはり別居結婚が良いのかもしれない。

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