カエルのつけもの石
それだけではありません。夜になると、お店の中は、亡くなったはずのご先祖様たちが、わんさかやってきます。そして、
「今からが、わしらの時間じゃ」
「つけもの、いっちょう」
「は~い、ただいま~」
しろうさんは、ねるひまもありません。
おまけに、夜中でも、
「ポリポリポリ」
「カリカリカリ」
「ポリポリ、カリカリ、ポリポリ、カリカリ」
「ポリポリ、カリカリ、ポリポリ、カリカリ、ポリポリ、カリカリ、ポリポリ、カリカリ」
亡くなったはずのご先祖様たちの、つけものを食べる音が、店じゅうに、ひびきわたっています。
「うるさ~い」
しろうさんは、耳をふさいでも、ねむれません。
今日も、朝から、お店の中は、人や動物や捨てられた家電で、ごちゃごちゃです。夜中にやってきて、あの世に、帰らなかったご先祖様まで、部屋の中でねています。
「こんなはずじゃなかった。助けてくれ~」
しろうさんは、今にもなきだしそうです。そのうちに、頭をかかえて走っていきました。
そして、つけもののところまで来ると、一番大きな石の上の、あの小さい石をつまみ上げ、
「ポトン」
空きカンの中に、入れてしまいました。
あたりは、急に静かになりました。あんなにごちゃごちゃいた人も動物もご先祖様も古い家電も、もうだれもいません。
「やっと静かになった。よし、もう一度。今度は、生きている人間だけに、人気のつけもの屋になるぞ~」
しろうさんはそういって、さっきカンに入れた小さな石を出そうと、カンをさかさまにしました。でも、なん度カンをふってもカラカラ音がするだけで、何も出てきませんでした。