なみだが、ぽろり
弟が、ハイハイを始めた。
ぼくが遊んでいると、すぐに、じゃまをする。
「ごめんね、お兄ちゃん」
ママが、代わりにあやまるけれど、みっくんは、あやまらない。
みっくんが、ぼくのカードをやぶったから、ちょっとだけ、たたいた。
ほんとに、ちょっとだけだよ。
それなのに、
「お兄ちゃんのくせに、何をしているの」
ママが、すごくおこった。
あれえ、なみだが、ぽろり。くやしくて、ぽろり。
夏休み、おじいちゃんと、山に登った。
登っていくと、
とちゅうに大きな池があった。
手を入れたら、びっくり。
しんぞうが、止まりそうなくらい、つめたかった。
おじいちゃんは、
「昔は、ここで、スイカをひやしたんだよ」
そんなことを教えてくれた。
おじいちゃんが、亡(な)くなったって、電話があった。
「また、遊びにいくね」
そういって、バイバイしたのに。
あれえ、なみだが、ぽろり。悲しくて、ぽろり。
「今日は、六時まで、仕事なの。そのあと、みっくんのおむかえだから、おそくなるよ。夜まで、けんた一人だからね。おなかがすいたら、そこにあるパン、食べててね」
パパもママも、夜まで帰ってこないんだって。
学校から帰って、
一人で、おやつを食べた。
ゲームもした。
宿題もした。
外は、真っ暗になったのに、だれもいない。
あれえ、なみだが、ぽろり。さびしくて、ぽろり。