「こっちへおいで」

みっくんが、お昼ねをしたら、いつもママがいう。

「ありがとう、けんた」

そういって、ぼくを、ぎゅっとする。

あれえ、なみだが、ぽろり。ママが大すきで、ぽろり。

 

「二人、ピー」

先生の笛が、鳴った。

みんな二人組(ふたりぐみ)になって、体育すわり。

「けんたくんは、先生といっしょかな」

ぼくは、先生と二人組。

 

遠足のお弁当(べんとう)タイム。

あれえ、みんな、どこへ行ったの?

ぼく、一人ぼっちで、食べるのかなあ。

「けんたくん、こっちだよ」

りきくんが、手をふっている。

あれえ、なみだが、ぽろり。うれしくて、ぽろり。

 

一年生のさいごの日。

先生が、ほかの学校へ、行くんだって。

先生は、ぼくがこまっていると、いつも助けてくれた。

先生、大すき。

 

もう、先生に会えない。

あれえ、なみだが、ぽろり。おわかれで、ぽろり。

 

ぼくは、小学二年生になった。

一年生の時は、大すきだった算数が、大きらいになった。

九九が、いやだ。

だって、

「けんた、シチロクは?」

ごはんを食べていても、ママが聞く。

「けんた、ハチロクは?」

おふろの中でも、パパが聞く。

 

もうやめてよ。

あれえ、なみだが、ぽろり。いやになって、ぽろり。

 

図書室で、本をかりた。

小さな魚たちは、大きな魚にやられてばかり。

ある時、

小さな魚たちが、力を合わせて、

大きな魚になるんだ。

そして、

大きくなった魚が、

いじわるな大きな魚を、やっつけた。

小さくても、力を合わせると、大きな力が出るんだね。