一章　自由への道

一九七八年十二月二十二日二十二時三十分

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「ヨガの訓練は毎朝六時から八時までの約二時間。内容は体を柔軟にするためのポーズであるヨガアサナ、呼吸法、それに瞑想だ。最初は無理をしないで、心と体を徐々に慣らすようにしなさい。レッスンは全て英語で行われているけど、私の話す言葉を注意深く聞いていれば理解できるはずだ」ウィットラムは、ゆっくりと分かりやすい発音で話を続けた。

僕は一言も聞き漏らさないように神経を集中した。

「ヨガ道場は、昼の間はいつでも利用できるようになっている。それと建物の隣に瞑想室があるけど、そこも道場と同じく自由に使っていいんだよ。恭平、いいかい……シバナンダアシュラムの方針は、個人の意思で何をやるかを決めることなんだ。

ヨガレッスン以外に、LIBRARYでヒンドゥー教の聖典やヨガに関する本を読んだり、毎日聖堂で行われているサットサンガに参加するのも、君の自由意思に任されている。もちろん何か困ったことがあったら、遠慮しないで私の所に来なさい。いつでも相談に乗るよ。

道場は道路を挟んで反対側の山の中腹だ。少し急な石段を上がりきるとすぐ目の前にあるから、小さな子供でも迷わないで行けるよ。他に質問は？」

「いいえ、何もありません」

ヨガレッスンの説明を聞けたおかげで、ようやく落ち着いて答えることができた。

「……ところで宿は決まっている？」ウィットラムは尋ねた。

「まだ何も決めていません」

「OK。からかった罪滅ぼしにいい宿を紹介しよう。建物は数年前に新築したばかりなのに、値段はリーズナブルだ。外国人の長期滞在者向けなので支払いは一週間単位だが、ヨガレッスンを受けている生徒達には人気がある。もし良かったら、今紹介状を書くよ」

「はい、お願いします」と、僕は言った。

彼はデスクに戻ると、机の引き出しから紙を二枚取り出し、紹介状と道順を示す地図を書いてくれた。僕はそれを受け取ると、頭を下げて精一杯の感謝の気持ちを伝えた。

「宿に不満がある時はいつでも言いなさい。シバナンダアシュラムには寮もあるんだ。今は満室だけど、部屋が空いたら入れるように手続きをしてあげるよ。でも、恭平にはあの宿が合っているような気がするな」