刑事狩り

「そういう問題ではありません。強行犯捜査係長たる者があのようなことでは士気が下がりますし、若手にも悪い影響しか与えません。各署で刑事課の改革が進んでいる中、うちにとって彼は必ず改革の障害となります」

「課長はどうしたいんだ?」

「すでに本人には勤務規律違反のかどで始末書を出すよう促しておりますが、これにも全く応じる気配もありません。他の課への異動を進言します」

「いきなり飛ばすのか? それは無理だろう。君も来たばかりなんだし、コミュニケーション不足なんじゃないのか? 酒でも酌み交わしてみて、お互い腹を割って話をしてみたらどうだ?」

「酒なんか飲んでも何も変わりません。今すぐ手を打たないと何か大きなことが起きそうでなりません」

「そこまで言うなら、副署長と面談をさせよう。私がやってもいいが、いきなり私が出て行ったら加藤も辛いだろう。副署長面談をして様子を見る。これでどうだ?」

「正直申し上げますが、副署長と面談しても、たとえ署長と面談しても彼は変わりません。私は他課への異動を強く進言します」

「まあ待て。まずは副署長面談をして、それでもまた命令無視をするなら異動を検討すればいいじゃないか。加藤の言い分も聞いてやらんと不公平になるしな。加藤は今日いるんだろ?早速加藤と面談するよう副署長には話しておく」

「わかりました」

佐伯は木下に頭を下げ、署長室を後にした。署長も結局は事なかれ主義か。指揮系統の乱れは組織の乱れにつながるっていうのに、誰もわかってない。佐伯は怒りが込み上げてきた。佐伯が刑事課に戻ると、加藤を中心に何かの話題で盛り上がっていた。

「係長、副署長から呼び出しなんて、何かしたんですか?」