刑事狩り

その日の夕方、署長室において佐伯と加藤との話し合いが行われ、その結果、加藤は今後上司からの命令を遵守すること、また佐伯は部下に対する態度言動を改めることを約束し、その話し合いはお開きとなった。やくざでいう「手打ち」だ。

佐伯、加藤はともに木下、三橋に頭を下げ、署長室をあとにした。二人はエレベーターに乗り、終始無言だったが、四階の刑事課でエレベーターが停まった時、加藤が口を開いた。

「課長さんよ。あんたは一年とここにいないんだから大人しくしてなよ。もうあんたの言うことは誰も聞かねえよ。俺を売ったことはみんな承知だ。あんたは終わりだ」

そう言うと加藤は口笛を吹きながら刑事課に戻っていった。

「どっちが終わりか教えてやるよ。組織をなめんなよ」

佐伯が加藤の後ろから言葉を浴びせると、加藤は振り向きもせず、佐伯に向かって手を振り刑事課に入って行った。

加藤との手打ちから一カ月が経ったが、加藤は相変わらず佐伯からの指示命令に対していちいち難癖をつけ、体制批判や佐伯に対する不平不満を陰でぶちまけていた。

「おはようございます。佐伯です」

「ああ、朝からすまないね。今大丈夫か?」

「はい、大丈夫ですが、どうしました?」

「いやいや、木下君から聞いたよ。君がそこの刑事相手に苦戦しているってな」

「はい、奴には手を焼いております」

「そうか。ところでな、そこに有田っていう女性警察官がいるだろ」