「失礼します」

有田が応接室に入ってきた。

「有田さん、非番で疲れているところ悪いね。そこに座ってくれ」

「はい」

有田は緊張した面持ちで席に着いた。

「そんなに緊張しなくていいよ。今日はね、君と少し話がしたくてね。時間大丈夫か?」

「はい、今日はもう上がりですから大丈夫です」

「たいした話じゃないんだが、有田さんは刑事希望なんだって?」

「はい! 刑事になりたくて警察官になりました」

有田の眼が輝きだした。

「そうか、それはありがたい。君みたいな人が刑事課に来てくれれば私も嬉しいよ」

「はい! これからもっと力を付けて一日でも早く刑事課に呼んでもらえるよう頑張ります!」

有田は佐伯に向かって頭を下げる。

「そうだな。でもな、力を付けるのはうちに来てからでもできるぞ。実務能力は現場で場数を踏むのが一番だ」

「はあ」

「どうだ、来月からうちの課に来るか?」

「えっ? 来月ですか? あと二週間後じゃないですか」

「そうだ、二週間後だ。君が望むならそうしてあげてもいい」

「ホントですか! とても嬉しいです! ですけど、あたしはまだ着任して一年も経ってないのに、大丈夫なんでしょうか」

「君はそんなこと心配しなくていい。やるのかやらないのかを聞いている」

「やります! あたし頑張りますのでよろしくお願いします!」

有田は立ち上がって佐伯に礼をした。

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